■永倉編
「な、な、ななななななな」
「どーでぇ! ここまでやったらいっそ腹が据わっちまったぜ!」
いえある意味予想通りですものすごい破壊力です永倉さん!
目の前に迫る迫力美人(?)に、
はとうとう座ったまま後ずさった。
すでに藤堂と原田、沖田まで窒息するのではないかという勢いで笑い転げているし、山南は酌をしてくれていた千鶴の目を手で押さえ、『あんなものを直視したら目がつぶれますから』と苦笑しきりだ。
近藤は爆笑こそしていなかったが前のめりになって腹を押さえているし、斎藤も土方もさすがに正視できないのか膳の上へと視線を逃がしている。
で、当の永倉の装いはというと、女物の襦袢に遊女が着る華麗な着物をまとってしっかりと前帯を締め、豪華な打ち掛けを半ば肩から落とすようにして背や腰に絡ませ、抜いた襟にも顔にも西国風にしっかりと白粉を塗って唇には鮮やかな紅、しかもちょこんとおちょぼ口風に作ってある。
髪にもつけ毛を足して結綿や簪をつけた姿で登場となれば、破壊力は計り知れないというものだ。
歩いた拍子に裾を割って見えた足にはしっかりとスネ毛、もろに男の顔だちの頬に厚く白粉をぬったものだから、蝋燭の灯りで一層妙な陰影がついてしまってものすごいことになっている。
目元にも紅をいれてるものだから、さらに凄い形相に拍車がかかり、えもいわれぬ迫力をかもし出しているからたまらない。
こんな迫力美人(?)に迫られては、男は何も言えない。
は左右の隊士たちに視線で助けを求めたが、だれも目をあわせてくれないどころか両手をあわせて「成仏しろよ」という態度まで取られてしまう。
永倉は本当に乗っているらしく、
の膳の上の銚子を取ると、さあどうぞ、と傾け笑顔を向けた。
もこうなったらと気力を振るい起こし、膳の前に進むと盃を持つ。
手が震えなかったのが不思議なくらいだが、藤堂が遠慮なく『狸芝居、狸芝居!!』と笑い転げる方に盃を投げ付けたくなる手を押さえるのには苦労した。
……しかし、ごつい体に絡み付くような花魁衣装が何とも目の毒だ。
ぐいっと盃を煽ったが、ものの味など分かりはしない。
ふぅ、と目を伏せて盃を干した
の表情に、永倉はちょっと悪戯心を起こした。
なるほどよく見れば、島原の女が好みそうな優男っぷり。
無骨で粗暴な印象のない細い肩やそで口から覗く男にしては細い手首、淡い爪の色。
寄せた眉根に寄る皺もどこかしら繊細、初な男が好きな女だったら思わず食いつきたくなるような所作。
「(こうなりゃとことんやったるぜ)」
永倉は膳と膳の間から膝で歩いて体を滑り込ませ、
の隣に擦り寄る。
まるで遊女がぴったりと寄り添って酌をするときのように肩を寄せ、しなだれかかる寸前の所まで近付いてゆく。
「こちら、良い男ですわぁ〜〜。 ささもう一献」
さすがに遊廓の言葉は知らなかったので適当だが、
が果敢に受けて立ち盃を持ったので、もう一杯ついでやる。
「ああらいい飲みっぷり。 主さん今夜は帰しませんよ、アタクシと朝まで飲み明かしましょう〜〜」
うっふん、と妙なあいの手がかかりそうな勢いで、永倉がズイッと迫る。
白粉まみれの男顔にずずいっと迫られて、さすがに密着は嫌だと
は背を後ろに逸らせた。
そこへ永倉が追い討ちをかける。
の肩を両手で押さえてそのまま後ろに押し倒し、ずいっと体の上へ乗り上がってしまう。
永倉の体重に着物の重量が加わるとけっこう重たい。
はおもわずグエッと妙な声を出して、腕を動かしどけ、とドンドンと永倉の胴体を叩いた。
「アタクシ、殿方に抵抗されるのもス・キなのですわ〜〜ん!」
「このぉ……大概にしろぉ!」
上に乗ったまま、ずい〜〜〜っと顔を近付けて来る永倉の悪のり具合に、とうとう
がキレた。
唇を奪われるその寸前で、自分から腹筋を総動員して起き上がりざまに頭突きをかます。
ゴチンと景気のよい音がして、永倉は痛ぇと悲鳴を上げて
の体から下りて横に転がった。
「……ぶった斬る!」
怒りのあまり興奮した
は、思わず腰にある刀の定位置に手をやるが、ここは島原。 遊廓ではよほどの事が無い限り腰のものは店に預けるのが決まりだ。
無いなら蹴飛ばしてやるとばかりに片足立ちになった時、
はにわかに体の均衡を崩して、そのままふらりと後ろ向きにブッ倒れてしまった。
動かなくなってしまったので、さすがに左右の者たちが心配して覗き込めば、完全に目を回してしまっている。
新八花魁が様子がおかしい事に気付いて、かくんかくんと揺さぶるが意識を取り戻す様子もなく、ぐったりとしたままだった。
ようやく笑いの発作から解放された藤堂が、原田に問いかける。
「あれ、頭突きのせいだと思う? それとも新八花魁の艶姿にあてられたのかな」
「さぁな……」
頭突きのせいってことにしといてやるのがいいんじゃないか? と、原田も笑い過ぎで酷使してしまった腹筋を解すように腹を撫でた。
■斎藤の場合
言葉もでない、だがそれは純粋に驚きのあまり、にだった。
目の前に立つ美人は一体誰かとあっけに取られていたら、左右の隊士のほうが先に気付いたらしくて凄まじい勢いで後ずさっていた。
伸ばされた手がつ、と頬を撫でた所で、それが誰なのか気付いた
は絞り出すようにその人の名を声に出す。
「さ、斎藤さん……」
「他に誰に見える」
感情の起伏のない声。 それはいつものことだが、今は余計に目の前の美人を際立たせる一要素にしかなってないように思える。
江戸風に肌に白粉を薄く乗せ、目元の紅はほんの少し切れ長に入れ、唇の紅もまた薄めに引く。
いつもひと括りに縛って垂らしている髪を上げてうなじを露にし、入れ髪をしてまとめ簪や櫛で飾り、あでやかな花魁衣装をまとったその人は、隊でも一、二を争う剣の使い手、斎藤一その人だった。
もともと切れ長の目元が際立って美しい、整った顔だちをしている彼だが、江戸風の薄化粧が恐ろしく似合う。
まさか自分でやったのではあるまいが、これを整えた人はいい仕事をしていると思わず感心してしまったくらいだ。
つい、と銚子を取る仕種までもしとやかで、一献どうぞと勧められると思わず盃を差し出してしまう。
一度は尻込みした連中も徐々に正気を取り戻してきたのか、目を擦ったり自分の頬をつねったりしている。
「どうした……?」
「あ、いえ」
ぼうっと斎藤の姿に見蕩れていた
は、妙な顔を隠すかのように大袈裟に盃を煽ったが、ものの味などさっぱりわからない。
他の幹部連中も斎藤の化けっぷりに目を白黒させている。
「あの……私ばかり酌をしてもらうのも何だ。 他の方々にも」
そう言って
が左右に視線を流せば、隊士たちは座ったままそれこそ3寸も飛び上がった。
冗談ではない、心の臓に悪いじゃないか、という要すがありありと伺える。
にしてみれば、『こんなのがひとりで捌ききれるか、お前等も巻き込まれろ!』という気分だったのだが、斎藤のほうが思いもよらぬ行動に出た。
手にしていた銚子を膳の上に置くと、ずいと
の側に寄り、まるで押し倒す寸前のように体に手をかけてくる。
男にしなだれかかる美女の図、に他の連中が何ともいえない声をあげる。
うめき声あり、悲鳴あり、やんやの喝采ありだ。
「さ、さ、斎藤さん、何を……」
「つれないではないか」
「え……」
斎藤は、平隊士に知らせていない事情が事情なので、さすがにここからは声を押さえたが、
にとっては押えようのない爆弾発言をかましてくれた。
「お前のためだからこそ装いを凝らしたと言うのに……他の誰かのためならばあの時どのような理由であろうと断っていた」
たとえ、あの人たちの命令であろうともと、近藤や土方の座る上座のほうにちらりと視線を流して、さらに
にしなだれかかる体勢を取った。
白粉と着物にたきしめられた香が斎藤の体温にあたためられてほのかに香る。
酒のせいでなくくらりと目眩がするのを感じ、
は斎藤の体を引き離そうと豪奢な着物に包まれた肩を押さえて力を込めた。
だが、斎藤が逆に腕を掴んでくる力のほうがしっかりしていて剥がせない。
斎藤は本当に女が男にするように、
の肩に頬を寄せる。
「何度も言うがお前だからだ。 ……なのに他の男の側へ寄れと言うのか? あまりな言い様だ」
他の男に酌などご免だ、側から離してくれるなと目を伏せる斎藤の色気に当てられて、とうとう左右に引いた面々のうち数人が廊下に駆け出した。
「ああっ、逃げるなお前等! 斎藤さん、わかった、わかりましたからそろそろ離れて……周囲に被害が」
今、明らかに袴の前を押さえていった奴がいる、破壊力ありすぎですからと、
はもう一度斎藤の体をおしのけようと一端片手を後ろについて体の位置を直そうとした。
が、運が良いのか悪いのか、その手を置いた位置に隣の席の隊士がひっくり返した膳の煮物がころんと転がっていた。
よく煮えた里芋の上に思いきり手をついてしまった
は、そのまま里芋をつぶしたぬめりでつるんと手をすべらせ、完全に体勢を崩して後ろ向きにひっくり返る。
斎藤も斜に
の体に体重をかけていたから、一緒に巻き込まれる形になった。
ゴチン! という音がしたので、斎藤が
の胴体の左右に手を突くかたちで起き上がってみれば、
は倒れた拍子に背の側にあった窓の桟に後ろ頭をぶつけたらしく、声もなく目を回して大の字に伸びてしまっていた。
「……五条? ……本当につれない奴だな」
斎藤が上に乗っかるような形になって、顔を近付けて頬をペチペチと叩いてみても、起きる気配もない。
「……起きぬと、本当に襲うぞ」
「斎藤さん、本当にそろそろ……」
これ以上は五条の心臓が持ちませんよと、度胸のある隊士のひとりの進言に、斎藤はしぶしぶと言った様子で
から体を話した。
この人絶対楽しんでた、と周囲はあえて口にしない。
絶世の美女から新選組の隊長の顔に表情を戻した斎藤は、気絶した五条を隣の部屋にでも運んでやってくれと指示を出す。
乱れた髪をついと直す仕種をする斎藤を横目に見つつ、
を運び出しにかかった二人の隊士は、駕篭を呼んで気の毒なこの同僚を屯所に帰してゆっくり眠らせてやることにした。
目を覚ましたとたんにまた島原だとわかったら、それこそトラウマになりそうだから。 屯所で目を覚まして『ああ夢だったか』と少しでも心を安らげたほうが後々の精神的な被害も少ないだろうから。
「……なぁ。 あの時五条の手元に芋が転がってて滑ったのって」
「ああ。 ……どっかの神様か仏様が見かねて助け舟を出して下さったんだろうよ。 ……俺たちも帰るか?」
「だな……」
再び盛り上がる宴会場の騒ぎを背中に聞きつつ駕篭を待つ時間は妙に長かったと二人は語る。
も、この日気をきかせて屯所に戻してくれた隊士には後日本っあ当に感謝した。
……目がさめたとたんにまたあの姿の斎藤が枕元にいたり、床入りの真似事まで悪戯して隣に寝ていたりしたら、本気で立ち直れなくなっていただろうから。
■沖田の場合
その人が入って来た時、宴会場で結構な人数が口元にあった盃を取り落とし、飲み込みかけた酒を噴出していた。
次の反応は様々で、悲鳴を上げたり大笑いしたり、無言で前につっぷして腹を押さえたりと、宴会場は混沌のるつぼと化した。
はその時、うっかり膳の酢の物を口にしていたのを驚きのあまり飲み込みそこね、酢が肺のほうへ流れてしまい盛大に咳き込み前かがみになってしまった。
隣にいた隊士が慌てて背中を撫で、茶がないからこれ飲めと、冷めてきていた椀のすまし汁を差出してくれたので急いで口と喉にからまったものを流し込もうとしている間に、その人は
の前に近付いてきていた。
の背を撫でていた隊士が迫力に絶えかねてざざっと後ろに後ずさる。
「あ、おいこら逃げるな!」
「すまん。 後は任せた」
俺どうせ死ぬなら斬り合いがいいと、隣の隊士は
に向かって両手をあわせた。 いかにも成仏してくれと言わんばかりの態度に、
はおそるおそる正面を向く。
「酷いよねぇ、まるで何か化け物でも見るみたいな態度してくれちゃってさ。 君は、そんなことないよね?」
こんな美女に迫られたら、男だったら嬉しいもんでしょ? とばかりに伸ばされた手が頬に触れる。
「沖田さん……!?」
「うん」
艶やかな花魁衣装をまとった沖田が、目の前に座りにっこりと微笑んでいた。
白粉も紅もほのかな江戸風の薄化粧をして、いつもは髷を結っている髪を下ろして入れ髪をして女髷に結い直し、髪飾りをつけている。
もともと体格がいいので、色襦袢も打ち掛けも前帯もどこかゴツゴツとした印象を拭えないのだが、何故か表情と所作だけは芝居の女形のように艶かしい所がある。
下手に手出しをしようものなら取り殺されそうな女っぷりの沖田を前に、
は言葉も出ない。
よほど『妖怪』と言ってやりたかったが、そんな事口にしようものなら絶対に無事ではすまないだろう。
他の幹部たちに助けを求めるように視線を向ければ、藤堂、永倉、原田の三人は笑い死にしかねない勢いで転がっているし、斎藤も土方も現実逃避真っ最中らしく黙々と手酌で盃を傾けていた。
山南はというと千鶴が沖田の姿を見て卒倒してしまったらしくそちらを横に寝かせて扇でぱたぱたと扇いでやっている。
頼みの近藤も、何かツボに入ってしまったらしく腹を押さえて前屈みになって笑っているではないか。
周囲の隊士たちはといえば、こちらをイケニエにする気満々で、そうそうに引いてしまっている。
覚えてろお前等、とばかりに
が心中で毒づいた
だったが、ここで気押されたら沖田のいいようにされてしまう。 事の発端があれとはいえ、この人のことだから絶対に楽しんでいる。
目的があるのなら侍が女の格好をするのは恥という感覚くらい、平気で蚊帳の外に置ける太い神経の持ち主だ、沖田という人間は。
「さすが、島原。 鄙ではまず見られない良い女だね。 ……酌をしてもらえるのかい?」
「ええ、喜んで。 東のお侍は無骨で乱暴な人ばかりかと思っていたけれど、あなたのような方もいるのね」
五条、すげえ……と周囲からつぶやきがもれる。
盃を差し出した深雪に、沖田も負けじと少し声を高めに出しながら応え、銚子を傾ける。
目を合わせた二人は、まるで道場で向き合った時のように好戦的な視線を交わし、物騒な笑みを向けあった。
「さすが、美女の酌だと違うもんだね。 私ばかり美人を独占するのも何だから、あちらにご挨拶がてら行ってみちゃどうだい」
そうして
が指し示したのは、絶賛現実逃避中の土方と、まだ笑いがおさまっていないのか腹を摩っている近藤の二人。
宴席の上座に座る人に花魁が挨拶で酌をするのは何も不自然な事ではない。
アテにならないのならいっそのこと一緒に被弾しやがれとばかりの笑みを向ける
の視線の先に気付いた沖田は、ちらりと土方に視線を向ける。
二人の様子に気付いた土方がぎょっと目を剥き肩をはねさせるが、
の目はとことん本気だった。
「(とんでもない企画を了承した責任は取ってもらいますからね! 襲われてしまえ!!)」
沖田だったら喜んで絡むだろう、そう思っていたのだが……沖田は
の斜め上の行動に出た。
銚子をコトリと膳の上に置いて顔を伏せ、まるで泣いているかのように肩を震わせはじめたではないか。
この様子には、さすがの
も声を失う。
「……酷い。 わたくしこの場に入ってきた時からあなた様しか目に入っておりませぬのに」
「ちょ……ちょっと、沖田さん?」
「新選組の副長さんといえば、『鬼』と島原でも評判でございます。 そんな恐い殿方の所へ行けなんて、酷すぎます……あんまりなおっしゃりようです」
これが普通に美女の台詞なら慰めにかかる所だが、全部沖田が言っている。
はこの状態でもまだ鳥肌のたたない自分の神経の太さもたいしたものだと思ったが、即興で正直『ここまでやるか!?』と言いたかった。
ちらっと土方のほうに目をやれば、さっと視線を外されるし。
「では、花魁。 あちらの局長にぜひ酌を」
負けてたまるか、と
は踏み止まる。ここで引いたら何をされるかわかったものではない。
が、沖田はさらに上手だった。
「嫌でございます、お側から離さないで下さいませ」
膳の脇から膝でするりと割り込み近付いて、豪奢な着物の袖を翻しつつ
の体にしなだれ掛かる。 周囲の悲鳴とも絶叫ともつかない声の中、勢い余って二人は畳の上に転がった。
さすがの
もこれには怒り、蹴り飛ばしてでも沖田の体を退かそうとするが、沖田はそっと腕を上げて袖で
の顔の横を覆い隠すようにしながら、さらに身を伏せて体を密着させた。
「沖田さん! そろそろ本気で怒りますよっ」
「僕、嫌だよ」
沖田は、他に聞こえないように囁く。
「何が!」
「こんな格好で、君以外の人にお酌するの。 たとえ近藤さんでも嫌、ましてや恋敵なんかに酌なんてできないね」
「はぁ?」
知ったことかといいたげな
の体の上から動かないまま、沖田はとどめの行動に出た。
ようやく現実逃避から少しは現実を見たり、笑いの発作から戻ってきた幹部連中に視線を向けるため、一度腕をつっぱる形で起きあがり、幹部たちに挑発的な笑みを向けたあと。
またも袖で横から
の顔を隠すようにして覆いかぶさり、もう片方の手で彼女の頭を抱くようにして一気にお互いの顔を近付けた。
その場が一瞬静まり、またも大きなどよめきに包まれる。
沖田はあまりの事に目を回して伸びてしまった
の上に乗って体を起こした状態になると、下の犠牲者を見下ろしたままぺろりと己の唇をひと嘗めしてみせた。
「ごちそうさま」
あんた何した、という言葉の前に、沖田はニヤリと笑い自分の口と頬の中間の位置を指さすと、ここに接吻しただけとあっけらかんと笑った。
「僕、衆道の気はないから『この場で』そのものズバリはちょっとね。 じゃあ僕着替えてくるからそれの片付けよろしく」
ああ面白かったと沖田はさっさと退室してしまう。
気の毒にも『それ』呼ばわりされた
はというと、このままではあまりに気の毒すぎると哀れんだ同僚の手により屯所へと帰される事になった。
「……あいつめ……!」
衆道の気はないから〜の意味に気付いた者たちは、それぞれの意図を込めて沖田の出ていった襖を睨んでおいた。
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