■幕末のお買い物 ---貧乏食卓編---
ある日、千鶴と
は食糧の買出しを命じられました。
その内訳は……。
いわし(安いので良い)--100匹
みそ------------------1貫
塩--------------------1升
しょうゆ---------------5合
青菜------------------10束
きゅうり---------------10本
里芋-------------------5升
豆腐----------------- -1丁
たくあん---------------5本
酒--------------------1升
米--------------------1斗
大福餅----------------10個
けっこうな大荷物です。
しかも150年後のように一ケ所へいけばすべての品が揃うような便利さは望めません。
「取りあえず、八百屋(野菜類)からすませようか。 んー、壬生村行ったほうが早いかな」
千鶴と
は手分けをして、壬生村の農家から菜っ葉10束ときゅうり10本、
里芋を直に買ってきました。 運良く沢庵5本も手に入りました。
千鶴「けっこうな量になりましたね」
「菜っ葉は150年後に『すーぱーまーけっと』で売っているほうれん草1束の量じゃないからね。
両手の指で輪を作るくらいの量を紐で縛った束が、1束5文 10束だから50文」
千鶴「お芋が、重たいです……」
「1升枡の計り売りだからね。 軽くみつもっても2貫(6.9kg)くらいになるはずだよ。
沢庵だって5本で重さ1貫くらいはある」
千鶴「お芋が5升で230文。 沢庵が5本で95文。
きゅうりも買いましたから、10本で5文ですね」
「野菜が値上がりしてきたな。 この分だと近々米も大幅値上がりしそうだ」
一旦屯所に戻って荷物を置いて、今度は町の専門店に向かいます。
農作物以上に重たいものばかりなので、荷車も持っていきます。
「……2本差した侍が荷車なんてひいてたら指さして笑われるのがふつーなんだが……
羽織り脱いでいくか。 行き先は、味噌屋、塩屋、しょうゆ屋、酒屋、米屋、魚屋、
豆腐屋、菓子屋だ」
千鶴「けっこうあちこち歩くことになりそうですね」
「まったくだ。 店の場所によっては一日がかりになる。
こうなると、一ケ所で全部そろえられるように『商店街』→『すーぱーまーけっと』に
なっていくのもわかる気がするな」
千鶴「大変だけれど、がんばって歩きましょう!」
「まずは味噌か。1貫(3.75kg)160文。 一般的な調味料だからさほど高い買い物ではないな」
千鶴「お塩1升(1.8L)も一升枡の量り売りですね。
どこの家にでもある調味料で、これだけの量で16文ですから、安いです」
「この時代、ややこしいのは150年後みたいに固形物はキログラム、
液体はリットルみたいに決まってないところだな」
千鶴「しょうゆ5合(900ml)……は、1升の半分ですね。 5合で80文です。
これだけ買う量が少なくないですか?」
「しょうゆは江戸や大坂、京都のような都会では地元生産も普及してブランド品まで出てきて、
生産も安定して庶民の食卓にものぼるようになったけれど、
まだまだ贅沢品という考えが根強かったからね」
千鶴「お味噌と同じくらいの値段になったけれど、まだお味噌のほうが人の口に慣れてたんですね」
「そういうこと。 さて次は豆腐だけれど……
この時代、1丁の大きさが『すーぱーまーけっと』で買う1丁の4〜5倍ある。
そうだな、B4サイズの紙の面積と同じ豆腐がどーんとあるのを想像してもらうとわかりやすい。
安くて栄養もあって、水の美味しい土地の豆腐は旨い。 お買得な買い物だ」
千鶴「切り売りもしてくれますしね。 はい、1丁で72文です」
「さて酒屋だけど……1升(1.8L)250文ときた。
これで中の上くらいの酒の値段なんだけれど、裏長家住まいで飲むようなドブロクの濁り酒なら
100文は安くなる」
千鶴「ちょっと奮発しちゃったんですね」
「魚屋だけれど、京都は輸送の関係があって塩漬や干魚が覆いんだよね。
半干しの目刺、安いの100匹、1,000文なり、と。」
千鶴「1朱と60文ですね」
「さて米屋だけれど、ちょっと計算が面倒なんだ。
1石=10斗=100升=1000合の換算で、今1石(150kg)がどれだけの値段なのかって言うと、
2.36両。
今の銭相場が1両=10,000文だから、23,600文になる。
さらにこれを10で割って1斗分を出すと、2,360文。
1朱=625文(大体)になるから、
米1斗は3朱と78文」
千鶴「でもこれじゃあ、量的にどれくらいなのか見当つきませんよ」
「じゃあ、150年後の数値で出すと……1石が150kg。 10キロの米袋15個分だ。
1斗は1石の1/10だから、15kg。
10キロ袋ひとつに、5キロ袋ひとつ足した量を眺めてみてくれ、意外と少ないぞ」
千鶴「確かに、大人数人が食べるなら一月持たないかも知れませんね」
「それだけじゃあない、この時代、とにかくみんな米を食べるんだ!
お上が決めた事によると、成人の男1人に割り当てられてる1日の米の量は5合。
あいつら1日5合くらい普通に食っちまう!
米の値段とあわせてみれば、会計方が頭を抱える理由がわかろうってもんだよ」
千鶴「1斗は100合ですから、20日分!?
それを10人で食べたなら、たったの2日分にしかならないじゃないですか!」
「……そゆこと。 値段の安い芋でも混ぜなきゃやってられないっての」
「最後は菓子屋。京都には高級菓子店もあるけれど、
フツーの駄菓子屋や甘味所はもちろんある。
大福餅、串だんごなどは1つ5文程度かな。砂糖が普及してきたお陰で甘味も随分安くなった」
千鶴「10個で50文ですね! でも前は4文、安い時は3文で買えたっていいますけど……」
「全体的に物価高だからねぇ……米ほどじゃないけれど、
小豆も砂糖も変動しやすいし、無理ないのかも」
さて、買出しが終わりました。
全体にかかったお金がいくらかというと……。
いわし(安いので良い)100匹 = 1000文=1朱60文
みそ 1貫=160文
塩 1升=16文
しょうゆ 5合=80文
青菜 10束=40文
きゅうり10本=4文
里芋 5升=230文
豆腐 1丁=72文
たくあん 5本=95文
酒 1升=250文
米 1斗=2360文=3朱78文
大福餅 10個=50文
合計 4357文=6朱と97文
「幕末は物価高騰がひどかったからな……とはいえ、贅沢しなければ3両〜4両で一家5人、
普通に暮らせた時代だ。
慶応の頃の銭の交換レートは1両=銭10,000の換算で、1朱は1/16両だから1朱=625文の計算、
これが慶応元年における大体の値段なんだが、恐ろしい事に2年後の慶応3年、
米の値段は何と3倍に跳ね上がる!
庶民の台所直撃、政情不安のとばっちりはいつも庶民の胃袋からだな」
※計算はすべて、M(えむ)独自のものです。
この他にも様々な換算法があり、江戸時代の物価を精確に現在の物価に換算するのは
難しいと思われます。
※値段は、分かるものは幕末の頃の値段、そうでないものは物価の比較的安定していた
天保前後の値段を元に、1.3前後の数値をかけています。
※醤油は幕末の値段が調べがつかなかったので、
『味噌と同じくらい普及はしてきた』と前提して算出しました。
※現代の値段に換算すると1両いくらか? を、現在の米相場を1キロあたり400円とみて計算すると、
1石が150キロなので『400×150=60,000円=1両』になります。
1両=銭10,000文なので、60,000÷10,000=6、1文は現在の6円……。
これも、1文30円説など様々な計算方法があり、江戸時代を通して相場は変動するので
1円あたりの価値は250年間一定ではありません。
※『薄桜鬼』二次創作に限り、上で算出した値段をネタや資料として用いてもらって構いません。